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PP503のメイキングに想うこと

 June 2018

 
 
以下は 2013年6月23日に記述したものです。ウェグナーのPP503のメイキングの様子が見られるので、改めてご紹介がてら加筆しようと思います。
 
2013年6月23日の記事
  
ザチェアのメイキング

 
「ザ・チェア」のメイキング
これはウェグナーによって1949年にデザインされ、PPモブラーというメーカーで制作されている椅子(1脚50万ぐらい)。この椅子の制作の肝は、肘から背へとつながったパーツである。ビデオを見ていただくとわかるが、加工はほとんどが機械。コッピングや3次元NCルーターと呼ばれる機械が、実に正確に加工をしてくれている。人が主体になって椅子を制作しているように見えるが、視点を変えるとかなり機械に支配されているようにも見える。ウェグナー自身も、安価に美しいものが作り出せるならば、機械化に賛同していたそうだから、この流れは喜ばしいことなのかもしれない。しかし、最近作られたザ・チェアは明らかにディテールの仕上げがお粗末らしい。機械化で楽になった分、仕上げに時間がかけられると思いきやそうでもないようだ。ただ、作り手として言えるのは、この作業に魅力はないということ。それが全てを物語っているかもしれない。
 
 
以下、現状を踏まえた加筆です。
 
PP503メイキング | HLF

 

ライセンスが切れリプロダクト商品がどんどん作られます

 
北欧デザイナーの多くの椅子のライセンスが切れ始め、リプロダクト商品(正規メーカー以外のメーカーが製造する商品)をよく見るようになりました。消費者としては、似たようなものが安価に購入できるので嬉しいのですが、我々作り手が見るとまだまだ随所に手を抜くための変更が施されていることに気づきます。その品質や仕様はそれを手がけるメーカーに委ねられますので、品質はまちまちです。ただ、技術の進歩は凄まじいので、コンピューター制御された機械を導入するメーカーが増えれば、忠実なモデルに近づいてゆくと思われます。正規メーカーと何ら変わらないものが出来てくるのは、そんなに遠い未来の話ではないと思います。
 
 

複雑なものが容易に作れる時代になっています

 
ここ飛騨高山にも3次元NCを導入するメーカーが増えてきました。CADで描かれた図面からデーターがおこされ、それを読み込んだ機械が自動で加工をするのです。人は材料を用意しセッティングするのみ。図面からおこされたプログラムは非常に複雑で、下手に修正し加工途中の3次元空間で0.1ミリでもズレ(不整合)が起きると動きません。そのため、プログラムのバグを解析する事はメーカーの開発担当者でも手に負えなくなることも多く、そのつど機械を作っている会社に問い合わせ、プログラムを解析・修正をお願いしているようです(遠隔でできるそうです こういう点はネット時代の良いところ)。もうこうなると、一体誰が作っているものなのか益々曖昧になってゆきます。
 
 

ストーリーや世界観を持つもの

 
もちろん、我々にはそんな機械を導入する資金も気もないので、道具を工夫したり、手仕事で複雑なものを作ることもしていますが、その工程は製品になってしまうと何も見えないのです(過程を見せる工夫は必要ですが)。そのため、ただデザインが良くて複雑なものというだけでは、これからの家具の価値基準としては、不十分になる時代がやってきていると言えます。(複雑な加工を施したものが、安価に手に入る時代に確実になっていきます)
売るためには、モノだけではなくコトが必要だと言われはじめて時間が経ちますが、おそらく今高くても売れているものはコトを提供できているのだと思います。見た目や機能だけではなく、その背景や世界観を持っていること。モノを所有することで、コトを共有できること。それが満足感に繋がります。うわべだけでは、純粋に機能と価格が見合っているかで比較・判断されるようになり、当然安いものが売れるのです。
 
 

コンセプトに賛同していただけるお客様のために

 
私たちの作るHLFの家具は、素材を飛騨高山のものに限定することでその背景を明確にし、長く使うためのサポート体制も含めたモノづくりの世界観をゆっくり時間をかけて構築しています。木材・革まで含めた地元素材で家具づくりをしているところは私が知る限りでは他にありません。それゆえに知ってもらい購入してもらうまでには相当時間がかかるだろうとも思ってきました。というのも、人はよくわからないものは買わないからです。誰かが持っていていいと思ったので確認して買うというのが、普通の買い物の流れです。それゆえ、現時点で私たちのコンセプトに賛同し依頼してくれるわずかなお客様は、かなり柔軟な思考を持った方々だといえます。でも、それでいいのです。トレーサビリティ素材はそれほど多くはありません。万人受けする必要もないのです。私たちはそんな限られたお客様のために、長く満足していただける家具をつくってゆきたいと考えています。
 
Diagram | HLF