Journal

廃棄されるイノシシの皮を減らしたい

 June 2018

 
 

野生鳥獣の農作物被害と駆除頭数、進まぬ利活用

 
イノシシや鹿による農作物への被害が増え続けています。農林水産省が公表している最新データ(平成28年度)を見ると、イノシシと鹿の被害額が突出しているのがわかります。それも年々増加しています。
 
廃棄されるイノシシの皮を減らしたい | 01 | Journal | HLF

 
このため国が報奨金を出して害獣駆除に力を入れています。さて、どのくらい駆除されているのか。こちらは環境省が公表している最新データですが、こんな感じです。 ちなみに、 報奨金は地域により差があり、高山市では鹿1頭につき3万円、イノシシは1.5万円です(11月から3月の猟期はもう少し金額が低くなります)。
 
廃棄されるイノシシの皮を減らしたい | 02 | Journal | HLF

 
全国でともに50万頭以上が駆除されています。作物に被害が出ているとはいえ、人の都合でこれだけ殺生しているわけです。これは国でなくても後ろめたい。そこで、国はジビエ食肉利用を熱心に促すわけです。さて、どれほど食肉利用されているのか。農林水産省平成27年度の資料によれば、こんな感じです。
 
廃棄されるイノシシの皮を減らしたい | 03 | Journal | HLF

 
ただお世話になっている猟師さんによれば、 実際は1割を切っていると言います。ここ飛騨地域では、わずか2パーセントと言われています。
肉がこのような状況なので、皮に至ってはさらに低いのが容易に想像することができます。データは探しても出てきません。皮の利用についても農林水産省が推奨しており、平成21年度「イノシシとシカの利活用」資料の事例がこちら。
 
廃棄されるイノシシの皮を減らしたい | 04 | Journal | HLF

 
ニホンジカの革が他と劣らないことを示し、バッグなどの革小物として活用されていることが示されています。随分前から取り組まれていますが、残念ながらほとんど我々が目にすることはありません。
 
 

イノシシの皮は鎧
 

さて、鹿の皮の活用事例は見つかりましたが、イノシシは個人で取り組んでいる事例がわずかにある程度でした。これは皮を剥く難しさとその特性によるような気がします。鹿は昨年初めて一頭丸ごと解体する経験をしたのですが、素人でも時間をかければ比較的綺麗に皮を剥くことができます。しかし、イノシシは部位により皮の厚さに差があり、特に鎧と呼ばれる人でいう肩に近い部分は非常に硬くて分厚いのです。慣れた人でも綺麗に剥くのは容易ではないと言われています。それを鞣していただくのも、苦労の連続でした。
 
廃棄されるイノシシの皮を減らしたい | 05 | Journal | HLF

 
 

放置された鳥獣は熊のエサにも
 

実際、多くのイノシシや鹿は山で駆除されると、その場でスプレーで個体に印がつけられ写真撮影されます。これを行政に提示することで報奨金を受けることになります。山奥であれば運び出すのも大変なので、多くは穴を掘り埋設することになります。一応、風雨等により露出しないように埋設するよう決められていますが、道具を用意してなければそのまま放置されてしまうのが現状です。例え、穴を掘り土をかけたとしても、クマをはじめ肉食動物であれば簡単に掘り出してしまうでしょう。クマの出没が近年多いのにも何かしら関係しているかもしれません。
 
 

活用する意識がなければ、切り刻まれてしまう皮

 
運び出すのに条件の良いほんの一部が食肉施設にて解体されますが、肉をとることが主目的なので、皮は切り刻まれてしまうのが現状です。比較的綺麗に剥ける鹿でも、ちょっとしたナイフの扱いミスで穴を開けてしまうことがありますし、そもそも駆除される際に散弾銃などで撃たれていれば皮としての活用は難しいのです。食肉施設では皮は、骨や肉にできない部分をまとめて風呂敷のように包む道具の役割をしているとも聞いたことがあります。
取り組んでみて思ったことは、とても個人で解決できるような問題ではないことです。捕獲する猟師、食肉施設、私を含めたそれを加工する人、そして何より一番大事なのはそれを理解して最終的にお金を出していただける消費者と全てが揃った時に、きちんとした循環が生まれます。そんなに大変なら全て焼却してしまおうと結論を出している自治体(下呂市)もあります。何が正解なのかはわかりません。
 
 

細く長く取り組むことで利活用サイクルを作る

 
ただ、人の都合で殺生していることは事実で、それを少しでも役立てようと努力している人(高山市内には食肉施設が6箇所)がいることも事実。全ては利活用できなくても、ここ高山では皮まで含めた利活用のサイクルができることを望んでいます。そのサイクルをいつかは作れるように、少しずつ長い時間をかけて取り組んでいこうと思うのです。
 
 

関わる素材・人・工程がみえる家具 = 完全なトレーサビリティ家具

 
Boar stool ボアスツール 丁寧に捕獲された個体をこれまた丁寧に解体処理してもらい、皮を姫路で製革。その後、飛騨の木材と合わせて、スツールが製作されるのです。時間はかかりますが、関わる素材・人・工程が全て見える家具となります。ただ、1脚だけで製作すると非常に高いものになってしまうので、ある程度ご注文を受けたタイミングで製作するなど、コストを抑える工夫も検討中です。興味ある方は、ぜひお問い合わせください。
 
イノシシやシカの革を扱い始めて、いかに飛騨牛の革が美しいかにも気づかされました。ただ正直言えば、少し綺麗すぎると思ってしまうことも。それだけイノシシやシカの革は趣があるのです。機能やデザインだけではなく、ルーツのわかるトレーサビリティ素材で作られたストーリーを持つ家具です。
 
 

廃棄されるイノシシの皮を減らしたい | 06 | Journal | HLF